ブリーダーになるには、国家資格や免許を取る必要はありません。代わりに、事業所のある都道府県などで「第一種動物取扱業」の登録を受け、事業所ごとに要件を満たした「動物取扱責任者」を置く必要があります。
この記事では、登録までの流れと費用、責任者の要件、頭数と繁殖の上限(数値規制)、登録したあとに毎日付ける帳簿と年1回の届出を、動物愛護管理法と施行規則の原文に沿ってまとめます。
この記事でわかること
- ブリーダーに免許は無く、第一種動物取扱業の登録制であること
- 動物取扱責任者になれる人の条件(実務経験・学校・試験の組み合わせ)
- 登録の流れ・手数料・有効期間(5年)
- 従業者1人あたりの頭数、交配の年齢と出産回数の上限
- 登録後に付ける帳簿・繁殖台帳・定期報告・販売時の説明・マイクロチップ
ブリーダーになるには、免許ではなく「第一種動物取扱業」の登録が要る
犬や猫などを業として販売する人は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市では市長)の登録を受けなければなりません(動物愛護管理法 第10条)。販売のほか、保管・貸出し・訓練・展示も同じ登録の対象です。
登録を受けずに営業すると、100万円以下の罰金の対象です(同法 第46条)。「ブリーダーの資格」として売られている民間資格を取っても、それだけで販売できるようにはなりません。
犬・猫を販売する場合は「犬猫等販売業」にあたり、申請のときに、犬猫の健康と安全を守る体制や、販売できなくなった犬猫をどう扱うかを書いた「犬猫等健康安全計画」も出します(同法 第10条第3項)。
窓口は自治体によって、都道府県の動物愛護センターや保健所、市の担当課などに分かれます。「業として販売する」に当たるかの判断も自治体が行うので、迷ったら事業所を置く場所の窓口に先に相談してください。
動物取扱責任者の要件。「資格」が要るのはここ
登録には、事業所ごとに動物取扱責任者を1人以上選ぶことが必要です(同法 第22条)。責任者になれるのは、その事業所の職員のうち、施行規則 第9条の要件を満たす人です。
| なれる人 | 条件 |
|---|---|
| 獣医師 | 獣医師の免許を持っている |
| 愛玩動物看護師 | 愛玩動物看護師の免許を持っている |
| 経験+学校 | 同じ種別での半年以上の実務経験(常勤に限る)か、それと同等と認められる1年以上の飼養の経験があり、かつ、その種別の知識と技術を1年以上教える学校などを卒業している |
| 経験+試験 | 上と同じ経験があり、かつ、公平性と専門性のある団体の試験で、その種別の知識と技術を身につけた証明を受けている |
どの学校・どの試験が認められるか、どんな経験を実務経験と数えるかは、登録を受ける自治体が確かめます。たとえば東京都は、ペットとしての飼育や繁殖の経験は実務経験に認めないと案内しています。
責任者には、自治体が開く「動物取扱責任者研修」を受けさせる義務があります(同法 第22条第3項)。東京都は1年に1回以上の受講を求めています。
経験・学校・試験の組み合わせが要件なので、独立する前に、ペットショップやブリーダーの常勤職員として経験を積みながら学校か試験を済ませておくのが近道です。
登録の流れと費用・有効期間
- 窓口に事前相談:施設の場所・図面、扱う動物と頭数、責任者の予定を伝える
- 施設と責任者の準備:飼養施設を基準に合わせ、責任者の要件を確かめる書類(実務経験の証明・卒業証明・試験の合格証など)をそろえる
- 申請:申請書に、施設の平面図、土地・建物を使える権利の書類、飼養の計画、研修の受講を示す書類などを添えて出す(東京都の例)
- 施設の確認:自治体の職員が現地で施設を見る
- 登録:登録番号が通知される。事業所に、名前・登録番号などを書いた標識を、見やすい場所に掲げる(同法 第18条)
手数料は自治体の条例で決まります。東京都では、1つの種別の新規登録が15,000円です。販売と保管のように種別を増やすと金額が変わるので、申請先の案内を確かめてください。
登録は5年ごとに更新しないと効力を失います(同法 第13条)。更新の申請でも、施設と責任者の要件が改めて確認されます。
頭数と繁殖の上限(数値規制)
2021年6月から、犬猫を扱う業者の飼養管理に数字の基準ができました(動物の管理の方法等の基準を定める省令。以下「基準省令」)。
交配の年齢と出産回数の上限は2022年6月から適用されています。頭数の上限も、既に登録していた業者への猶予が2024年6月に終わり、今はすべての第一種動物取扱業者が対象です(東京都動物愛護相談センターの案内)。
従業者1人あたりの頭数
| 上限 | うち繁殖に使う頭数 | |
|---|---|---|
| 犬 | 20頭 | 15頭 |
| 猫 | 30頭 | 25頭 |
親と一緒にいる子犬・子猫と、繁殖を引退した犬猫は数に入れません。犬と猫の両方を飼う場合の上限は、省令の別表で決まっています。
交配の年齢と出産の回数
| 雌の交配時の年齢 | 生涯の出産回数 | |
|---|---|---|
| 犬 | 6歳以下(7歳に達した時点で出産が6回未満と証明できれば7歳以下) | 6回まで |
| 猫 | 6歳以下(7歳に達した時点で出産が10回未満と証明できれば7歳以下) | 回数の定めなし(年齢の例外の判定に回数を使う) |
帝王切開は獣医師に行わせ、出生証明書と、母体の状態・今後の繁殖の適否についての診断書を受け取って5年間保存します。年齢と回数を証明するには、交配と出産を1頭ずつ記録した繁殖台帳が欠かせません。
生まれた子犬・子猫は、生後56日を過ぎるまで販売のための引渡しや展示ができません(同法 第22条の5)。
登録したあとに付ける帳簿・届出と、販売のときの義務
登録してからが、ブリーダーの事務仕事の本番です。犬猫を販売する事業所の主な記録と手続きは5つあります。
| 記録 | 中身(根拠) |
|---|---|
| 動物の帳簿 | 犬猫は1頭ごとに、品種・繁殖者・生年月日・取得日と取得先・販売日と相手方・販売時の説明の実施状況・死亡日と原因など13項目。5年間保存。電子の記録でもよい(同法 第21条の5第1項・施行規則 第10条の2) |
| 繁殖台帳 | 繁殖の実施状況(交配・出産など)を記録し、5年間保管(基準省令 第2条) |
| 定期報告 | 4月1日〜翌3月31日の、期首の頭数・月ごとの取得数・販売や引渡し・死亡の数・期末の頭数。期間が終わってから60日以内(5月30日まで)に様式第11の2で届け出る(同法 第21条の5第2項・施行規則 第10条の3) |
| 販売時の説明 | 買う人に、事業所で実物を見せ、対面で、飼い方・生年月日・繁殖者の名前などを書面か電子で説明する(同法 第21条の4) |
| マイクロチップ | 取得した日(生後90日以内なら生後90日を過ぎた日)から30日以内、それより前に譲渡するならその日までに装着し、環境大臣の登録を受ける。登録済みの犬猫を取得したときは変更登録を受ける(同法 第39条の2・第39条の5・第39条の6) |
帳簿と定期報告は同じ数字から作るので、帳簿の付け漏れがあると年1回の報告で数が合わなくなります。新しく登録した年度は、登録日から3月31日までが最初の報告の期間です。
帳簿はスマホで付けられます
当社のアプリ「ブリーダー帳簿」は、個体・交配・出産・販売・死亡をスマホで記録していくと、帳簿と繁殖台帳がそろい、定期報告の頭数を集計します。
血統書やマイクロチップの証明書を撮ると、名前や番号を読み取って登録できます。交配時の年齢と出産回数が上限を超えそうなときは警告します。
手元にいる10頭までは無料です。ブリーダー帳簿のページを見る
個人・自宅・副業でも登録の中身は同じ
法律は、会社か個人か、専業か副業かで登録の中身を分けていません。自宅の一部で始める場合も、施設の基準・責任者・帳簿は同じです。
責任者は事業所の職員から選び、環境省は「専属の常勤職員」のうち要件を満たす人と説明しています。会社勤めをしながら自分が責任者を兼ねられるかは、事業所を置く自治体に確かめてください。
よくある質問
ブリーダーの民間資格は取ったほうがいいですか?
動物取扱責任者の要件に使える試験なら意味があります。要件は「経験」と「学校の卒業か試験の合格」の組み合わせなので、資格だけでは足りません。どの試験が認められるかは、登録先の自治体の案内で確かめてください。
猫だけ、小動物だけのブリーダーでも登録は要りますか?
はい。登録の対象は哺乳類・鳥類・爬虫類の販売などで、犬猫に限りません(同法 第10条)。犬猫を扱う場合だけ、犬猫等健康安全計画やマイクロチップなどの決まりが加わります。
帳簿は紙で付けないといけませんか?
いいえ。施行規則 第10条の2で、帳簿は電子の記録で保存してよいと決まっています。立入検査で見せられるように、すぐ開ける形で残しておくことが大切です。
登録に有効期限はありますか?
はい、5年です。更新しないと期間が過ぎた時点で登録が切れます(同法 第13条)。更新の申請の時期は自治体の案内を確かめてください。
まとめ
- ブリーダーに免許は無く、第一種動物取扱業の登録が必要(無登録の営業は罰金の対象)
- 登録には、要件を満たす動物取扱責任者が要る。要件は獣医師・愛玩動物看護師か、「経験」と「学校か試験」の組み合わせ
- 手続きは自治体への事前相談から。東京都の新規登録の手数料は1種別15,000円で、5年ごとに更新
- 従業者1人あたりの頭数、交配の年齢・出産回数に上限がある
- 登録後は、帳簿・繁殖台帳を5年保存し、毎年5月30日までに定期報告を出す
